大事に育てたのに

「大事に大事に育てても、これだよ?
虚しいったら、ないよ。
立ち去る時に、挨拶とまでは言わないけれど、ちょっと振り返ったり、名残惜しむフリくらいしてくれたっていいじゃないの。
ねえ?」







ええ。







「子どもの時はすごい食欲だから、食糧集めるのも大変なんだから。
そうそう。食糧も育ててるんだよ、庭でね。」






子育ては、やはり長期プロジェクトですよね。






「もう、鳥なんて、大嫌い!
あいつら、みんな敵だからね。」






確かに鳥にとっては、ごちそう・・・





この知人が育てているのは、






オオムラサキ
 オスは紫色がきれい
 メスは地味だけど、色気が。





チョウチョなのです。
ネットで、200匹もの幼虫を買い込んで(1匹100円〜200円)、冬を越させる。
榎の葉をバリバリ食べる姿がたまらなく可愛いと。
結構な勢いで食べるから、榎も植えて、育てているのだ。





「見たい?」
「欲しい?」
「え?見たくないの?」
「お子さん、喜ばないかな?」

と数度に渡り、声をかけてくださるので、つい、





見せてください。




と言ってしまった。
生き物好きへの誘惑。






手提げカバンを持った知人が、「持ってきたよ♪♪」と嬉しそうにやってきた。
大きな飼育ケースに入れて持ってくるのは大変だろうと思っていたら、




ほら♪




と、平たいプラスチックケースをカバンから取り出した。
レストランの紙ナフキン状に折られた新聞紙の中にはさまれているらしい。
いや、ほんとに平べったい生き物だね。
でも、だいじょうぶなんですか?




「冷蔵庫に入れてきたから、動かないよ。」





し・・・死んじゃってるのかな。





「違うって。
暴れるといけないから、寒いところにいれて、動きを鈍らせてあるんだってば。
暴れると、羽がボロボロになっちゃうからね。」






でも、キャベツを冷蔵庫から取り出そうとしたら、チョウがいた!



・・・というシチュエーションは、きゃー。



成虫には、カルピスに焼酎を混ぜた物をあげるんだって。
おいしそうに長いストローでチューチューしながら、美しい羽を広げたり、閉じたりしてる。



カワイイかも♪ ← 危険





身体が温まってきたようで、元気に飛び始めた。
チョウチョの解凍。




自然界の色って、ほんとにすごいな。
花火をマットな色彩に置き換えたような感じ。



裏は、ちょっと手抜きっぽい色彩。舞台のセットみたいな仕組みだねえ。


なんと、このチョウを譲ってくださった。
一旦家に持ち帰ったら、自然の多いところに放してあげよう。
チョウチョ苦手なガールズが驚くかな。
でも、小学生の頃、飼育していたアオムシやミミズを食卓に置いて、蒼白にさせてくれたしね。←親子同類




成虫になってからは、たった2週間の寿命なのだそうだ。
夏を楽しんでおいでー。
空に放す時には、この知人のように、寂しい気持ちになるのかな。