歌うネアンデルタール 〜音楽と言語から見るヒトの進化〜

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世界中、どこにいってもある「音楽」が、いつ頃どのようにして人類が生み出したのかを考える。
言語と音楽は、どちらが先に生まれたのだろうか?
今までは、音楽は言語の副産物として認識されてきているけれど、著者は、初期人類は「音楽のような言葉」を発することから始まったと仮定する。
その音楽的コミュニケーションを「Hmmmmm」と名づけて、これを意識しながら、人類の進化をひもとく。



ネアンデルタール人は、歴史の途中で絶滅してしまう。
けれども、喉頭と脳はこの「Hmmmmm」を使える機能を持っていることがわかっており、20万年前の社会には、いろんな生活の場面で歌声が響いていたと仮説する。
一方、進化を続けたホモ・サピエンスは、意思疎通を確実にするための言語が発達し、音楽はどちらかというと感情表現を担う位置づけとして熟成されてきたと考えているとのこと。



たしかに、文法体系を築くより、音の調子自体を言葉にしてしまう方が分かりやすい上に簡単だし、自然。
動物の気持ちだって、鳴き声の調子で伝わってくる事が多いしね。
音楽が先に生まれていたというのも考えられるかも。
まあ、でも、どこからが音声で、どこからがメロディーで、どこからが音楽かという定義がよく分からないなぁ。



考古学・生物学など広い分野での理論的な文章なので、私にはやや難しく、わりと斜め読み。
「言葉は理解できるが、言葉を発せられない」もしくは「言葉を正しく使えるのに、相手が言っていることが理解できない」という言語障害についても触れるなど、脳と言語のしくみにまで説明は及ぶ。
でも、章ごとに「まとめ」があるので助かったー。



目次を見ると、興味が湧く方もいるんじゃないかな。

1.音楽の謎  〜音楽進化史の必要性〜

第1部 現在
2.チーズケーキ以上? 〜音楽と言語の類似点と相違点〜
3.言語なき音楽 〜大脳、失語症、音楽サヴァン
4.音楽なき言語 〜後天性・先天性の失音楽〜
5.音楽と言語のモジュール性 〜脳内における音楽処理〜
6.乳幼児への話しかけ、歌いかけ 〜脳の成熟、言語学習、絶対音感
7.音楽は癒しの魔法 〜音楽、感情、医術、知性〜


第2部 過去
8.唸り声、咆哮、身振り 〜サル、類人猿のコミュニケーション〜
9.サバンナに響く歌 〜「Hmmmmm」コミュニケーションの起源〜
10.リズムに乗る 〜二足歩行と踊りの進化〜
11.模倣する性質 〜自然界についてのコミュニケーション〜
12.セックスするための歌 〜音楽は性選択の産物か〜
13.親に求められる物 〜ヒトの生活史と感情の発達〜
14.共同で音楽を作る 〜協力と社会のきずなの重要性〜
15.恋するネアンデルタール 〜ホモ・ネアンデルターレンシスの「Hmmmmm」コミュニケーション〜
16.言語の起源 〜ホモ・サピエンスの起源と「Hmmmmm」の分節化
17.解けても消えない謎 〜現代人の拡散、神とのコミュニケーション、「Hmmmmm」の名残〜