グリーン天職バイブル

uiui2009-03-22


本というよりは雑誌の別冊。(書店にて1,000円)
私が唯一年間購読している



環境と社会貢献と志のビジネス情報誌「オルタナ



の別冊なのだけど、内容は雑誌とは異なり、前代未聞の就職情報誌であり求人誌となっている。
オルタナの提案する「存在が地球にも社会にも自分にもうれしい企業」が自薦他薦で集結した。
しかも、人事担当者が記事を書いているのではなく、経営者や代表取締役自身が自らの事業の志を書いているのだ。
また、入社数年の新人社員が会社に対して感じたことを書いている。


掲載企業は、103に及ぶ。
だけど、掲載順や使用ページ数は規模の大きい順でもなく、掲載料をたくさん払っている会社がカラーになっているわけでもない。
50音順だ。
3名で成っている会社やNPOもあれば、上場企業もある。
個人事業もあれば、大和ハウスナチュラルハウスパタゴニアといった有名企業までが並んでいて、業種や職種別にもなっていない。
実のところ「現在は採用の予定はありません」というところもあるようだ。



まだまだ20世紀のモノサシで事業をしている会社も多いと警鐘するオルタナが、21世紀の健全な資本主義を展開しようとしている。
アメリカでは、ウォルト・ディズニーやグーグルを抜いて、NPOが学生就職人気ランキングにはいるという現象も起きているらしい。



山田養蜂場の社長が言うには、


「企業が悪いことをしないためには、良い事をし続けるのが一番。」


とのこと。
企業の不祥事や法令違反が続いているけど、コンプライアンスに躍起になったところで悪いことをしようと思う人の意思を全部阻止するのは難しいと思う。
でも、良い事を多くすることで社員にプライドが浸透し、それを守ろうとする意志が自ら湧いたら、それがきっと企業を守るのだろう。
あちこち傷んだところに一時的な薬を塗ってしのぐより、体を健康にした方がいい。



当初、この企画が持ち上がった時、代表取締役が書いた記事となると、会社のいいところばかりを書いたり、時には虚偽内容もあるのではないかという危惧があったそうだ。
だけど、虚偽を書けば、事実との差異が発覚するのは必至なので、宣伝どころかリスクを背負うことになる。
その点を信じて、思い切ってやってみた企画なのだそうだ。
掲載されている経営者と新入社員への質問事項は以下の通り。

<経営者へ>
・環境活動や社会貢献活動におけるこだわりと具体的な活動
・代表者の「経営の志」や経営のゴール・夢
・どんな学生や転職者と一緒に働きたいか

<新入社員へ>
・入社理由と入社した後も同じ気持ちかどうか
・会社の良いところ・悪いところ
・やりがいを感じる時


就職にこの本を活用するかどうかは別としても、会社を選んだり評価する視点が変わるかもしれない。
規模の大きさや事業の種類に関係なく、どの企業も社員たちに社長や代表者の顔が見えているという印象を受けた。
また、虚栄心や一時的な利益のためでなく、自分の会社の存在が、地球との共生の一環となり、社会を循環させる手助けを担おうとしているのが共通した特徴だろう。
その会社にいると楽しいだろうなと思わせるのだ。
そして、就職関連誌なのに、会社の仕事を生きがいにしなくてもよい。生きがいは偶然に現われ、それがその人の「仕事」になる。だから、それが見つかるまでは、いろんなことに一生懸命関わるべきだとするメッセージにも共感できたなあ。



掲載されている会社がやっていることが、「正しい」かどうかなんて、実際分からないと思う。
エコやリサイクルを提唱しながらやってることが、実は逆効果だったなんてことも実際あるわけで、1つを尊重したら、他を無駄にしていたりもするのだろう。
だけど、ここに載っている社長や代表者たちは、実際に動いている。
口だけや思いだけでなく。
それが大事。
それが魅力。
それがやりがい。
それが仕事。
そして、人が集まり、会社となる。


そんな感じ。



不況下では、生計を立てられる仕事があるだけでも幸せだと感じがちだけど、自分がほんとにやりたいことって、どんなことだろうと考えさせられる1冊だ。