食えば食える図鑑

全日本食えば食える図鑑

全日本食えば食える図鑑

いわゆるゲテモノ食いというのかもしれないけれど、アマゾンで猿を食べたり、カンボジアでクモをから揚げにしたり、オーストラリアでイモムシを食べたりするほどにはいかない程度の内容ではないかな。
それに、ウニを割ってそのまま食べたり、動いてる魚をテーブルにどんと置いてつまんだり、踊り食いをしている日本人を考えても、どこからどこまでが「ゲテモノ」で、どこからがそうでないのかなんて分からない。
著者である椎名誠さんは、地元の人が伝統として大事にしている食や自慢にしている味を試すのがとても楽しそうである。
料理番組のコメンテーターのように、それらの食を褒めることしかしないわけでなく、絶賛の合間に、「評価のしようがない味が悲しい」というのもある。
「是非、食べてみろ」と言わないところも親切である。
また、捕ったものはちゃんと食べるというのが信条だそうだ。
必要以上に捕って捨てたり、捕るという快楽の後で逃がすというのは気分が悪いらしい。


ただ単に「ほら、こんなすごいモノを食べちゃったぞ。うひひ。」という悪趣味な見世物的試食ではなく、そこには土地の歴史や風土を尊ぶ気持ちが見える。
精のつくハブを食べたあとで、妙にポジティブ思考になっているところもなんだかおかしかったり、椎名さんの軽快な文章でサラリとゲテモノを語る。(私にとっては、やはりゲテモノです)
文章や写真を見たら、少なからず「食べてみたい」と思う人がいると思うなぁ。



沖縄の与那国島石垣島ヤシガニは、ミソをスープにいれた蕎麦になったり。
エラブー(ウミヘビ)捕りの話には、体が固まる。調理にも震える。
そして、ハブ。
ほかに佐賀県のイソギンチャクやワラスボ、そして巨大なアラ。
京都のエチゼンクラゲマンボウ
北海道のエゾシカやザリガニ。
岩手県では、ゴカイの一種のエラコを生で。(ひー)
高知のウツボ
熊にナマズに・・・・・
全国の麺比べもあり。



すごく楽しそうに食べているのに、読んでる私は食べてみようと思えないのが不思議なのだが、飽食の日本でも色々な食文化が密かに残っているのが不思議。
工業製品であるかのような食材には代わりになれない食がそこにはあるのだ。