別れを惜しまない

「あんなに大事に育ててあげたのに。」






元上司が言う。






「フツーは、別れを惜しむとかするよね? せめて1時間くらいさぁ。」







「お別れのために、わざわざ逗子まで行ったんだよ!」







「あんなにさっさと去ってしまうなんて。行きは、タクシーにしたんだけど、帰りは悲しくて、とぼとぼ歩いてしまったよ。」








「あーあ。あんなの育てるもんじゃないね。」







この方が育てられたのは、







チョウチョ 










でございます。
オオムラサキね。
稚魚の放流のごとく、卵から育てた蝶が成虫になったので放しに行かれたのです。
鮭なら、戻ってくるのにねぇ。
蝶はねぇ。








「今度は、放蝶会というイベントにしたいんだけど、来ない?」








行きません。