博士の異常な愛情

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キューブリック監督の超ブラックなコメディ映画。(以下、ややネタバレ的文章になっています)
笑える箇所が散りばめられているというよりは、映画の最後に「自分が笑われている」ような気分にさせられる。
ピーター・セラーズが、マンドレーク英空軍大佐、アメリカ大統領、ドイツ人博士ストレンジラブと、3役を怪演。
「ストレンジラブ」という名前から想像できる異常な人なのだ。
「右脳と左脳が断裂した人」という評もあり。
映画は、米ソ冷戦時代の設定で、狂ったリッパー将軍が、敵を核攻撃することを意味する「R作戦」の指令を出す。
このR作戦で使われる攻撃システムを作ったのがこの博士だ。



「演習でなく、実戦ですね?」 
「そうだ」 




知らぬうちに開始されてしまった作戦の核の破壊力と殺人能力を聞いたアメリカ大統領は、


「私はヒトラーと張り合うつもりはない!」




と、ソ連首相に連絡をとり、爆撃機を撃墜するよう頼む。
この作戦は、実行に相当な決断を有するだけあって、作戦中断の手段があちこちで阻まれるように設定してあり、もう大変なのだ。
それでも、ほとんどの爆撃機を呼び戻すことに成功し、3機を撃墜し、あと1機。
これがー。



当のリッパー将軍のその後の行動に全身脱力。



更にソ連アメリカも、核攻撃されれば自動的に核で反撃する装置を完成させていることが発覚。
核の応酬が止まらないシステムを博士が勝手に作り上げていたのだ。



大統領が事実を確認すると、車椅子のストレンジラブ博士は、



「私の権限でメーカーに依頼しました。人間の感情に左右されないコンピュータ制御の“皆殺し装置”を」



そして、更に皆を納得させる。
放射能で汚染された地上となりますが、地下1000メートルに選ばれた人間が100年過ごせば地上に出られます。男性1に対して女性10を交配し、人類の伝統と未来を守るのです!!!!」




戦争って、こうやって起こってるんじゃあるまいね?
なにかに追い詰められた状況が、正常と異常の定義を反転させる。



映画の最後には、巨大なきのこ雲たちを背景に、ヴェラ・リンの優しい歌声で『We'll meet again(また会いましょう)』が流れる。
もう誰にも止められない。



♪また会いましょう、どこかで。
いつの日か、きっとまた会えるでしょう。
ある晴れた日に、微笑み忘れず、あなたらしく笑み絶やさず、青い空の輝きが黒い雲を払うまで。




あなたは、ラスト・シーンで笑えますか?