新解さんの謎

新解さんの謎

新解さんの謎

辞書は、万人が調べるものであるので、解説文は最大公約数的な言葉を選び、批判を浴びないよう守りの姿勢であり、像はあっても触れないような、そんな文章の羅列だ。




という概念をくつがえす、 「攻めてくる辞書」。




それが、三省堂刊「新明解国語辞典」第3・4版なのです。
他の版は、万人の辞書であるのに対し、この版の解説文には、独断・偏見・好み・趣味が満載のようです。
最初は気づかなかった異臭に気づいたSMさんと著者は、調べれば調べるほどプンプンにおってくる新解さんの「なんだかヘン」の虜になってしまいます。


たとえば、 「ねばねば」 の使い方例文。

「ねばねばした暑熱と、たえまない靴音と、汗ばむ倦怠にひたって、すれちがうイタリア娘の腰と足を鑑賞していると・・・」




・・・・なんかヤラシイ。




文字での理解というよりも精神に訴えてくる解説。
時には、ちょっとした助詞に対し、何行もの解説文が作られており、読み終わる頃には何の解説だったか忘れそうになるほどだったりもします。
そんな新解さんの「ヘン」を追究したのがこの本。
この本自体は辞書ではないのに、とりあげられた言葉の画像がちりばめられていて、とってもシュール。


1992年に文藝春秋で掲載されたもので、ベストセラーだったんですね。
実は、「新解さん」は、共著した先生方みなさんのキャラではなく、主幹であった山田忠雄先生だそうです。
他の先生が、文を変えた方がいいと提案しても却下され、「辞書は文明批評だ」という信念を貫いたのだとか。
その後の版は、どんな感じなのかなあ。


他に「かみがみの消息」という話も掲載されてます。
世の中にあふれる紙の実態と謎に迫ります。
お札はどうして破れやすい紙でできているのか?
公衆電話ボックス(今では減ってしまったけれど)に貼られているチラシは、剥がされて捨てられないようにと業者のこんな苦労が・・・。

などなど。