風に舞いあがるビニールシート

風に舞いあがるビニールシート

風に舞いあがるビニールシート


6つの短編がはいっています。
色んな仕事をしてる人がいて、「毎日毎日同じことの繰り返し」とか「やりがいがない」とか「自分の時間がない」「自分にとっての仕事って何?」とか・・・
なんだか自分のとこ振り返ると、「これでいいのかなあ」なんて不安になりつつ、他の世界でバリバリ仕事をしている人がまぶしく見えたり?


信念を持って、生きている人ってかっこいいよなあ。
でも、信念なんて作ろうと思って作れるもんじゃないし?


どの短編も仕事をしている自分がテーマ。
昨日のコピーみたいな今日を重ねていた時、自分の中に不思議な芯ができていたり、「ダメダメな自分」が外からよく見たら違っていたり。
あり得ないような華やかな成功&Happy物語は書かれてないけど、とりあげている職業が一般的なものからレアなものまで色々で、ほどよい緊張感がある。


「器を探して」「犬の散歩」「ジェネレーションX」
ぶつぎりな話の終わり方が、かえって、華やかな舞台ではない職の中に芽生えた自意識を伝えてくる。
他人にアピールする必要もないけれど、自分の中の「譲れない場所」に気付いた瞬間。
これなら、私にもあり得るかも!?
営業職の人に読んでもらいたいなあ。



「守護神」
おもしろーい!
期限間近のレポートをたくさん抱えた大学生。
見た目はね。
本人も「なんて情けないヤツ」と思っていた。
「藁をもつかむ想い」でつかんだ彼女から見た大学生は全くの別ものだったのです。
他人による自己分析も時には必要かもねー。
失敗企画の商品としてある小物が登場するんだけど、私はコレ、欲しいです。


「鐘の音」
異色の職業。究極の職人魂。芸術家。
高い意識を持てば持つほど、納得のいく仕事ができない芸術家は、自分がゆるせなくなってしまうんですねえ。
そんな中で、方向転換は挫折?
これは私には起こりそうにない。なぜなら、とても芯の強い人の話だから。(笑)
仏像修復ネタが結構詳しく取材されていておもしろい。
その時代を支配する者によって、宗教観も変化してゆき、寺に本尊として置く仏像を変えなくちゃいけなくなるわけです。
でも、お金がないと、元々あるものを作り変えちゃったりね。
仏像修復の作業は、なんと数ヶ月も寺に泊り込むこともある大変な仕事らしい。




「風に舞いあがるビニールシ−ト」
やっとタイトルの意味が分かって、すっきり。
職業の設定もすごい。
国際的なテーマと個人の想いが交錯する様子が緊張感を持って伝わってきます。
整然とクールに書かれているけれど、取材と勉強が大変だったんじゃないかなあ。
世の中の夫婦がどんな夫婦かは、その夫婦にしか分からないし、それを幸ととるか不幸ととるかも夫婦次第。
描かれている夫婦は、「かわいそう」ってとられるのかな。
でも、私はこんな風に想われたらいいなと思う。