ラッシュライフ

ラッシュライフ (新潮ミステリー倶楽部)

ラッシュライフ (新潮ミステリー倶楽部)

1つの大きな事件が中心になっているのではないけど、これはほんとにミステリー。
それぞれ別のジグソーパズルだと思っていたのに、最後に大きな一つのパズルとして、ピースがピタリと合ってしまう。
怖いような、不思議な感覚です。
後半は、どんどんピースがはまっていく感じが加速して、




え〜〜〜、そことそこがはまる???




と、小さく叫び続けながら読んでました。





誰かの1日の何気ないひとコマが、他人の誰かの一生をかけた瞬間と隣り合わせていることは、実はよくあるのかも。
本では、オムニバスで複数の他人の生活が進んでいくのだけど、途中からほんのわずかに、そして終わりに向けて急速に相関図を作り始め、ひとコマたちが意味深く手をつないでしまう結末。
ひとコマたちには、ちゃんと理由があることを実感して、思わず、巻頭に戻って読み直したくなるよ。
ページの上の単語や文節が、どんどん立体的な空間を創っていく感覚からして、読者もある意味、登場人物の一人なんだね。




神様がいるとしたら、多くの人間の一生をちょっぴりイタズラに操作して、こんな風に見まわしているのかも。
この本は、神様目線の疑似体験っぽいな(笑)




誰でも、人生をうまく終えたいと思っているけれど、何度か登場するエッシャーの「無限階段」のように、実は登っているようで下っていて、下っているようで登っていて、勝っているようで負けていて、負けているようで勝っていて。
果てしないことを続けているのを、たまたま訪れた死がそれを止めてくれるだけということなのかも。
登場人物だって、本が終了した時、終わりのような始まりのようなとこにいて、なんとも救いようがない。
人生に起承転結なんて、ないんだなあ。