彼女が消えた浜辺

uiui2010-09-19

イラン映画をヒューマントラストシネマ有楽町にて。
未知数の高い国イランの日常生活を垣間見ることができる。「超日常」を描いているイラン映画は珍しいのだそうだ。
もちろん、男性が半そで短パンなのに、女性は髪を覆い、身体の線が分からない長袖長ズボン姿。
その姿で男女入り混じって、ビーチバレーをしていたり。
しかも、ストーリーで重要なポイントとなる文化・風習は、日本では考えられないものだ。
宗教が日常生活の基本になっているしね。
登場する車は、プジョーだったりBMWだったり。これは、イランではフツーなのかしら?




まあ、とにかく、そんなカルチャーショックだけで終わる映画ではないの。
新聞のレビューを読んだことがきっかけで観に行ったんだけど、書かれていた感想と私の感想はなんだか違うなあ。
心象が中心の映画のレビューと個人の感想が異なることって多いな。




(あらすじ)
3つの仲良しファミリーが、独身の男性1人と独身の女性1人を加えて、3泊のヴァケーションにでかける。
実は、この旅行は、この独身の男性・女性をカップルにさせるのが目的の、いわばお見合い旅行だったのだ。
ところが、みんなでのんびり過ごしている時に、独身女性エリが忽然と姿を消してしまう。
エリの家族や警察に連絡となると、実は、誰も彼女のことをよく知らないということに気づく。
「エリ」も呼称であって、本名さえ誰も知らない。
家族構成も知らない。
消えてしまった理由など、知るよしもないのだ。
彼女をめぐる残された者たちの騒動は、小さなウソの積み重ねで、どんどん悪い方への転がっていってしまう。





ネット社会だと特に、「アドレスと呼称は知っていても、それ以外は知らない人」とのお付き合いは多い。
知っているつもりで、何も知らない人たち。
映画では、ネットコミュニティではない家族や友人同士なのに、小さな気持ちの行き違いから、ピシピシッと亀裂がはいってしまう。
親切(時におせっかい)や温かいジョークに埋もれさせていたはずのお互いの間に、大きな空洞があることに気づき、寒々とした気持ちになる。
つい誰かを傷つけるのだけど、、そんなことをしてしまった後で一番傷つくのは自分だったりする。
そんな心象風景。




というか、あの女性!!!


彼女を黙らせろっ!!!




と映画館にいた観客の9割以上が心の中で叫んでいたのではなかろうか。(-_-;)





海岸風景は、マルグリット・デュラスの「アガタ」を思い出させた。
凧あげをするエリの、自分が空を飛んでいるようなすがすがしい笑顔と、他の場面での表情の差が印象的。