インセプション

CMのあの印象的な映像が、こうつながるのかとオドロキ。
相手の夢の世界に侵入し、その人の「アイディア」を盗んだり、逆に人が造った思考を埋め込んだりする技術を利用した産業スパイたち。
いかにもアメリカ映画的な豪快なアクションと映像・明快なストーリーが、どーんと最初から最後まで途切れることなくつながっているのだけれど、それだけじゃなかった。
この映画は、現実と夢(潜在意識)の二重世界で成り立っているのだけれど、ストーリーも「明快なストーリー」の他に、実はつかみにくい心象や葛藤の展開というストーリーとで二本立てになっていて、観客は前者のストーリーに注意をはらっていたのに、いつも間にか後者のストーリーの重要さと深さに捉われてしまう。
観客は、まさに夢と現実が入れ替わってしまったかのような困惑を感じることになる。
このあたりの映画の作りが精巧。



映画の中には、日本の新幹線内でのロケシーンも出てくる。
渡辺謙さんが出演してるし、発売されたばかりの?トヨタの高級車・新型レクサス(に見えたけどなー。しかも私の上司と同じ赤色)がカーチェイスに登場していたりと、日本色も散りばめられている。
でも、この映画は「夢・潜在意識」がテーマ。
アメリカや京都などの国名・都市名は出てくるけれど、「主な舞台はここ」というのがない。あるのは、「夢の階層」と「現実」という舞台だ。
夢の部分だけでなく、現実を描いてる場面でもどんどん舞台が動いていくんだよ。



とにかく、既成概念の壊し方がすさまじいこと。
あのCMは序の口だったよ。それだけでもかなーり楽しめる。
でも、すさまじいのに、ぐちゃぐちゃじゃないの。
「人間の心」という形のないルールが、見えない骨組みになっていて、きちんと展開に期待を持たせてくれる。
オカルト的になりそうな場面も、科学からはみでない。



「夢」の特徴をよくつかんで描いていて、「そうそう、夢って、そうだよね」と共感してしまう。
ウソの世界での疑似体験なのに、朝目覚めた時に、逆に現実に対して感じる違和感とか。
非現実の中での痛みなのに、朝目覚めた時に、なんだか痛いような気がしてしまうとか。
記憶に導かれている夢なら、見覚えのある景色が出てきたり。
未来への希望や不安が夢になってみたり。
夢の中で、「これは夢だから大丈夫」と思っていたり。




エンディングは、やや予測した通りだったけれど、「インセプション」という行為が、主人公にとって本当はどういうものなのかは、予想もつかない内容だった。