医学と芸術展(森美術館)

uiui2009-11-30

六本木ヒルズ森タワー53階にある美術館で、こんなすごいモノたちが待っているとは思わなかった。
これだけのボリュームの展示物を高層階に運ぶのは大変だったのではないかしら?
公開スタートとなったばかりなのに、ネタバレが多いレポートですので、ご了承くださいね。




医学・薬学の研究に対し、世界最大の助成を行っているウエルカム財団(イギリス)のコレクションがほとんどだ。
テーマは、 「科学(医学)と芸術が出会う場所としての身体」。

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無料の音声ガイドがあって、充実した解説をしてくれるので、是非借りましょう。




人によっては、気分が悪くなって、見るに耐えないものがたくさん展示されているので注意です。
異性と行くと、ちょっと気恥ずかしくなるようなものもあるので注意です。
スーパーマンなどのアメリカのヒーローたちが驚く姿で登場するので、がっかりしないよう注意です?




第1部は、 「身体の発見」。
ダ・ヴィンチは、「芸術の基盤には科学がある」と言っていたそうだ。
まだ、芸術が現代ほど分析を受けず、生命科学が宇宙の謎と同じくらい深いものであることに気付き始めた時代。
解剖は、医学研究のためだけでなく、一般民衆のエンターテイメントだった。
現代の人間の尊厳なんて、吹っ飛ぶワールドだ。
財力にものを言わせて珍しいものを集めていた者は、生きている人間の断面(筋肉・内臓・胎児が描かれている)の絵を好んだりした。


全長10cmほどの男女の模型があった。
お腹がはずれると内臓が見える。生殖器の違いが分かる。胎児がいる。
しかも模型は象牙製だ。
正確さにはやや欠けることから、医学関係者というよりは、一般人のためのものと考えられるそうだ。


ダ・ヴィンチの頭蓋骨や肝臓血管の習作は、すさまじい模写だ。
しかも左利きだった彼は、文章を無理して左から右へ書くことをせず、右から左から書いた上に、右利きの人が読めるように鏡文字(裏から見たら、フツーに左から書いた文章に見える)で書いてる!!



第2部は、 「病と死との闘い」。
いつも印象的な作品を出すなあ、やなぎみわさん。
今回は、この展覧会のために「The three fates」を出展。
ギリシャ神話に出てくるモイライ三姉妹をテーマにしている。
姉妹はそれぞれ、「生を生み出す」「運命を振り分ける」「運命・生命の糸を切る」という役目を持っているのだけれど、この三姉妹でさえ老いから逃れることができないのだ。
豊かな黒髪をもった彼女達がどんな姿で描かれているか。



ダーウィンの杖(持つところがドクロになってる)や大隈重信の義足、義手、義眼・・・
普段全く目にする機会のないものばかり。
昔の医療機器や現代の先進技術も紹介。
病や死に対する意識も時代と共に変化してきたのだね。



第3部は、 「永遠の生と愛に向かって」。
そうなんだ。
医学も科学も難しいのは技術的なことだけじゃない。
心や意思、アイデンティティーを持った肉体は、各機能が動いていれば「生きている」とはならない厄介なものなのだ。
アメリカのヒーローたちだって、そのテーマから逃げる事はできなかったようだ。



「ゲーム・ボーイズ・アドヴァンス」は衝撃的だった。
ゲームを楽しんでる2人の少年のマネキンが立っているというなんでもない光景。
だけど、この2人を良く見ると、髪に白髪が混じっている。
顔にはシワやシミ。
腕も毛深い。
彼らは、クローン人間。

クローンは子宮から生れ落ちたとしても、組み込まれた「遺伝子の年齢」から年をとり始めるそうだ。
だから、クローン羊のドリーも6年しか生きられなかったとのこと。
この少年達も一見少年の体型だけど、体内年齢はおじさん。
これでよいのか?




唖然としたのは、同じ人の大きな顔写真が2枚ずつ、6〜7組ほど並べられているコーナー。
左の1枚はこちらを見ていたり、7ヶ月の赤ちゃんは涙を浮かべていたな。
そして右の1枚はみな、目を閉じている。
眠っているのではない。死の直後。
この写真の人たちは、みんなもう亡くなっているのだ。
もちろん本人と家族の了承を得ての展示なのだけど、死をふいに身近に感じて当惑した。
みんなはどう感じるのだろう。



とにかくコレクション内容が多種多様で、思ったよりずっとボリュームもあって、予想していたものをずいぶん違ったなあ。
「おもしろい」という言葉がフィットするのかどうかためらうけれど、かなり戸惑う。かなり考える。かなり感じる。



ちょっと長くなってしまったので、同日に行った同じく六本木ヒルズのテレルヴォ・カルレイネンとオリヴァー・コルタカルレイネン(世界各地の住民合唱団が不平不満を歌詞にした大合唱をする)とクリスマスマーケットについては、後日。
53階にあったツリー。