閉鎖病棟

閉鎖病棟 (新潮文庫)

閉鎖病棟 (新潮文庫)

精神病院の話。
といっても、病ならではの奇行を列挙するわけでもなく、家族との生活の問題という点をつきつめているわけでもない。(そういう場面もあるけど)
ここに登場する人たちは、病院で生活しているけれど、外出もできるし、定期的に自宅へ戻る(外泊)も許される。
病院の外の人たちと違うのは、「欲」がぐんと少ないことだ。
登場人物は、以前は大工だったり、料理人だったり、医師だったり、「なにか」であったのに、入院することでひとからげに「患者」と称されてしまうのだが、実はつらい過去や重い罪を背負っている者もいる。
犯罪を犯したけれど、精神鑑定で刑務所ではなく、精神病院にまわされた人たちだ。


そんな人たちが、すぐ隣にいくつかの死を見据えながら、仲間の温かさを支えに「患者」としてでない自分の生き方を見直していきます。


ところで、また得意の脱線です。
この本の中には、罪を犯したのではなく、罪の犠牲者となって通院している女性が登場します。
彼女は中学生だというのに、とんでもない人間に陵辱され、想像を絶する忍耐を強いられます。
犯罪にも色々種類があるけれど、私はこの手の犯罪は許せないです。
女性が殺された事件で、状況を説明する報道は大抵「衣服に乱れの有無」を伝えるけれど、それを聞くと本当に悲しくなる。(乱れがなかったとしても)



で、今日の新聞に載っていた記事。
リベリアの13歳の少女が難民キャンプで乱暴されて、股関節が脱臼し、不自由な身になっていたのだけど、日本人看護士が自費で日本での手術を受けさせようと奔走しているというニュース。


すばらしい。
だけど、この少女の実名も写真も掲載されてるんですよね。
もし、これが日本人の少女だったらありえないよねえ?
リベリアでは、日本よりはるかに多く起きている犯罪だから、事件への認識が低いのだろうか?
それとも、国の違いによる報道モラルの差異?
本人が将来の自分へ希望を持っているわけだし、その笑顔を公開することで、同じような苦しみに人知れず耐えている女性がいるならば、応援になるのかもしれない。


13歳の少女の笑顔が、なんだか妙につらかったです。
MSNニュースの記事はこちら(写真なし)