偽薬のミステリー

偽薬のミステリー

偽薬のミステリー


「偽」とあるからには「本物」あっての存在なのですが。
でも、それは全くニセモノで効果のないもの、もしくは「毒」であるかというと、違うのです。


例えば、常習性の高い、しかし効果の高い薬があるとします。
この薬の服用の合間に、常習性を間引くために、本物そっくりだけど小麦粉などの全く効き目も害もない原料でできている偽薬を、患者に内緒で与えたら?
この偽薬が本物の薬のような効果を生み出してしまう事があったりするのだそうです。



また、睡眠薬なしで眠る事ができない人が、朝起きて、枕元に飲み忘れた薬を見つけて驚いてしまう事があったりします。
「飲んだつもり」が効いた偽薬効果ですね。



病院の医師が持っている資格証明などを待合室に仰々しく飾り立てていると、見栄っ張りな感じがするかもしれないけれど、古ぼけて質素な病院よりも患者の回復率が良かったりする。
これもある意味、偽薬効果。



逆効果もあります。
何の病状もない人たちに、なんの害も効果もないものを「新薬を試したい」と服用させたら、何人かは「具合が悪くなった」と訴えだしたりします。



「患者が求めた事(言葉がけ・対処など)を医師が適切に与える」ことが精神的作用して、薬に薬以上の効果を与えること、もしくは逆に逆効果を与えてしまうことを「偽薬効果」というのだそうです。
それには、あらゆるパターンがあって、時に予期せぬものだったりするのですが、医療の世界ではタブーともいえる領域のようです。
昔の呪文や神頼みの医療だって、偽薬効果狙いといえるでしょう。
現代の最新医療が「迷信」「子供だまし」みたいなことの効果を認めるなんてできないわけですよね。



著者はれっきとした医師でありながら、このタブーの世界を検証し、患者に与える精神的作用がどんな本物の薬となりうるかを研究しています。
精神的ケアなくしては、治療はありえないとさえ考えているようです。
当たり前のようで、当たり前とされていないことなんですね。