ダーウィン展(国立科学博物館)

uiui2008-03-28


見応えは、想像以上。
ダーウィンを虜にした生物(生きてるもの・剥製・化石・骨格)がガヤガヤと迎えてくれる。
混みあっている来場者と同じくらい賑やかな展示物たちだ。
分類学や固有種の発生を口ずさんでいる。




「進化論」
今回の展覧会は、この論のすばらしさばかりが焦点ではない。
「科学的発見」という役者が舞台にあがるまでに、


・歴史のタイミング
・科学者をとりまく人材


これらが針をそろえる時間をどれだけ待たなければならないか・・・・
そこにも大きく焦点が。
科学者の感受性と努力の耐久性とが、運命と競争という感じだよ。
ダーウィンの場合、「進化論」を確立して発表するまでに、なんと20年以上も発表の時期を待っていたのだ。
科学者の人生にスポットライトなのです。



<歴史のタイミング>

1.そこにあった壁は、キリスト教
進化論は、神への冒涜ととられ、せっかくの研究が退けられるだけでなく、自分や家族が迫害を受けることになる。
「進化論」を受け止めてもらえる時代が間に合ってよかったね。


2.英国の国力
当時、英国は世界中に植民地があったため、航路があちこちにあり、旅の途中からでも、集めた標本を自国に送ることができた。また、手紙の収受も航海しながらできたため、ダーウィンの研究や発見が他の人よりも早かったという証明として残すことができた。
実際に、科学者ウォレスがダーウィンと同じような論文を発表しようとした時に、「ダーウィンの方が論の確立が早かった」という証明になった。
(結果的には、両者名義で同時に発表することになった)



<科学者をとりまく人材>

1.エラズマス(ダーウィンの祖父)
テーブルをお腹の出具合に合わせて削らなければならないほど太っていたらしい。
実は、このおじいちゃんが「進化論」の元になる「ズーノミア」という論文を先に出しているのだけれども、検証性が低かった。
それを受け継いだ形で、時を経て、ダーウィンが論証してみせたことになるらしい。


2.フィッツロイ艦長
航海のチャンスを得て、乗ることになったビーグル号の船長さん。
科学好きで、その上お金持ちだったため、海軍が出資してくれない装備には自分のポケットマネーを当ててしまう。性能の高い羅針盤も自前。
この羅針盤が狂うといやだといって、もともと備わっていた鉄製の大砲を取り払って真鍮製のものに替えてしまう。
ダーウィンの最強の理解者。


3.妻という一番おもしろそうな標本←ダーウィンの言葉
航海から戻ったとき、そろそろ結婚した方がいいけど、どうしようと考えるダーウィン
「結婚損得リスト」を作って、結婚の短所・長所を挙げてみる。
そして、最後に「ソファに座る優しい妻」という長所が勝ち残り、めでたく結婚に踏み切る。





航海では、初めて出会う生物・植物たちに狂気乱舞のダーウィン
そんなものばかりに接してて、毒や病気にやられずに戻ってくることができたのも、かなりの強運だよね。





うわぁ、珍しいムシ!!
逃がすものか!!



と言って、捕まえた獲物が逃げないように口に いれちゃった。
「ホソクビゴミムシ」「ミイデラゴミムシ」に強烈な酸を口の中に放出されることになるのに。




イグアナもアルマジロも試食。




生物に対する偏見がなさすぎである。




こんな野性的な人物の家系が、あのウェッジウッド家の血縁であることにも驚く。←偏見





気の毒なのは、愛娘アニーを結核で失った時。
神様に召されたと心の平穏を取り戻す母に対し、父であるダーウィンは、




「病弱な私の遺伝子が彼女の命を奪ったんだ」



と自分を責め続けることになる。





展示に最後に出てくる「アングレクム・セスキペダレ」という植物は、20〜30cmほどの長〜〜〜い筒の中に蜜が入っている。
それを見たダーウィンは、この蜜を吸うための長〜〜〜いストローのような口を持った虫が必ずいると予言した。
当時それは、発見されることがなかった。




この予言から40年後、長いストローを持ったキサントバンスズメ(蛾)が発見されたのだった。
経験と知識に裏づけされた予感は、確信と同じなんだ。



亡くなったダーウィンは、神の冒涜者どころか、ウエストミンスター大聖堂に埋葬されるのだ。